ビジネスチャンス、知っておくべき世界のトレンドを発見しよう

家計の外貨資産46兆円で最高

外貨建ての運用が一般的になり、過去最高とは言っても、個人金融資産約1,600兆円に占める割合は、まだ3%にも達していない。

外貨で得した、損した、という方も、家計の総資産に占める割合で考えると、ごく僅かというケースがほとんど。日々の収入は円建てのはず。その上で、もし円安をリスクとして本気で通貨の分散を考えるなら、かなり思い切った配分をしないと、意外と外貨のパーセンテージは上がらない。

 

日本経済新聞:2015年3月3日)

家計の外貨建ての金融資産が46兆円程度となり、約7年半ぶりに過去最高となった。急速な円安で円建ての評価額が膨らんだほか、国内の低金利や円の先安観を背景に海外投資志向も強まったためだ。残高は2013年末と比べ7兆円増加。株高とあわせて富裕層を中心に個人の資産が増えており、消費を後押ししそうだ。

  日銀の資金循環によれば、個人の外貨資産はこれまで07年9月の45兆円が最高だった。その後、金融危機後の08年末に27兆円まで落ち込んだが、円安や海外株高とともに徐々に回復。昨年10月に日銀の追加緩和で円安が加速してからは一段と増え、市場動向から推計すると今年に入り一時46兆円を超えたもようだ。

 内訳は投資信託経由での外国証券への投資が約30兆円、外国株や外国債券への直接の投資が約10兆円、外貨預金が約6兆円。通貨は米ドル建てが過半を占める。

 この半年の急増の主因は円安だ。昨年10月の追加緩和で円相場は1ドル=109円台から120円前後に下落した。円安・ドル高が進むだけで円換算の保有額が増える。

 世界的な金融緩和で先進国の株式や国債の価格が軒並み上昇したことも追い風だ。外国株の代表的な指標にこの1年間投資した場合、円ベースで24%値上がりし、外国債券でも7%上昇した。

 金融資産の一部を海外資産で持つニーズが強まっていることも背景にある。富裕層向けの金融サービスに強みを持つUBSでは、資産を守るために通貨を分散させようとする顧客が着実に増えているという。

 日銀の資金循環統計によると、昨年4~9月に投資信託は外国証券を3兆5千億円買い越した。個人による外国証券の直接取引も1兆4千億円の買い越しだ。SMBC日興証券の牧野潤一氏は「低金利や円安が長期化するとの見方から個人の海外志向は続く」とみる。

 証券投資の値上がり益は個人消費に好影響をもたらしそうだ。この1年間での家計の外貨建て資産の値上がり益は5兆円強に上る。日本株投資でも20兆円近くの利益が出ているとみられる。2つをあわせると昨年4月の消費増税の年間負担増(約8兆円)を大きく上回っており、消費意欲の下支えが期待される。

 もっとも外国証券や日本株への投資は富裕層や高齢者が大半。日銀の昨年の調査では年収が1200万円以上の世帯では株式・投資信託の平均投資額が873万円に上るが、年収500万円未満の世帯だと200万円を下回る。中・低所得層梅田専太郎は株高・円安の恩恵を受けづらい。

 一方で円安は輸入価格を押し上げる。食料品などの値上がりが家計を圧迫し、消費を鈍らせる要因になる。本格的な景気回復には「中小企業まで賃金上昇が広がり、個人消費の裾野が広がる必要がある」(メリルリンチ日本証券の吉川雅幸氏)との指摘が出ている。