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成長戦略としての移民政策 

日本で移民政策が語られる時、その対象はなぜか工場労働者や看護師といった職種が前提になっている。

そうではなくて、例えて言うならサッカー日本代表監督のように、通訳を従えてでも日本で働くことを選ぶ高所得者外国人をターゲットにした方が、裾野が広がる。

移住する外国人にとって、魅力的な税制や、彼らの家族が通えるようなインターナショナルスクールの増設、外国法人が支店を置きやすいビジネスインフラの拡充などに力を注ぐべき。日本語を習得してから来てください、というスタイルではなくて、英語と片言の日本語ができれば普通に生活できる環境を作ってしまう方が早い。

業種を問わず、世界的なプレイヤーや企業群が、アジア本社を日本に置くようになれば、帯同家族も含めて長期滞在者(広義の移民)は掛け算で増えていくはずだ。

 

日本経済新聞:2015年4月14日)

アベノミクスの第三の矢である潜在成長率引き上げには、労働力人口の減少を食い止める必要がある。出生率の引き上げが今すぐ実現したとしても、労働力に寄与するのは20年後だ。人口減少・労働力不足に対して即効性があるのは、移民の受け入れ拡大しかない。しかし選挙民の反発を恐れて、公に移民拡大を唱える政治家はごく少数だ。

 医療・介護分野、建設労働者、観光など多くの分野において、人手不足が深刻化しており、今後はますます日本経済の成長力を制約する要因となっていくだろう。

 現在日本は、少数の高所得・高学歴の専門家、研修・技能実習を名目とした短期間の労働者、農村地帯の外国人花嫁、留学生のアルバイトなどとして、細々と外国人を受け入れているにすぎず、年間数万人の規模にとどまっている。

 これに対して、欧州の中核であるドイツでは、欧州連合(EU)域内の労働移動が自由であることも寄与して、年間の総流入は100万人前後にも上り、純流入も40万人前後に達している。

 もちろん多数の外国人労働者の流入は、フランス、ドイツなどの欧州諸国で文化・社会摩擦を生み、一部では外国人排斥運動も発生している。

 日本でもバブル末期の人手不足期に受け入れを始めた日系ブラジル人等について、日本語が全くできない労働者を受け入れたこともあって、その子弟の一部が日本の小中学校からドロップアウトし社会問題化したのも事実である。こうした内外の事例から見て、日本社会に無理なくなじむことができる外国人労働者を、当面、年間数万人程度受け入れる方針を打ち出してはどうか。

 

例えば、母国語がきちんと話せることに加えて、日本語能力試験1級レベルの人材に対して5年程度の就労ビザを発給してはどうか。日本語能力試験は年間60万人程度の受験者があり、1級には5万~6万人が合格している。日本の労働市場で不足が見込まれるのは、専門家ではなく、中級レベルの人材だ。

 外国人看護師の受け入れがスムーズにできないのも、看護師試験が難しいからではなく、日本語が難しいからだ。バイリンガル人材が増えれば、日本をアジアのビジネス・金融・医療センターにする可能性も高まる。国内投資にも大きなプラス効果となる。