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多国籍企業の「節税」監視  欧米、国際ルール模索

こういうテーマは、グローバル企業→機関投資家→富裕層→個人、という順番で時差はあるものの、富裕層個人にもいずれ影響が出てくるはず。

 

日本経済新聞:2013年5月22日)

アップルやグーグル、アマゾン・ドット・コムなど、グローバル企業の「節税」に監視が強まっている。低税率の国に巨額の資産を移して税負担を軽減する仕組みで、企業にとっては最大の利益を確保するための合法的な措置。だが財政悪化に直面する各国政府は「課税逃れ」と指摘する。企業のグローバル化やIT(情報技術)化に、各国の税制が追いつかない面もある。

 米議会上院は21日、アップルのクック最高経営責任者(CEO)を呼び、米国での納税回避を追及した。議会の報告書によると、アップルは連邦法人税率が35%と高い米国を避け、実質的な法人税率が2%以下のアイルランドの子会社に多額の利益を移転している。 

  証言に立ったクックCEO梅田専太郎は「アップルは米最大の法人税の納付企業。昨年度は60億ドル(約6120億円)を支払った」と説明した。ただ現金の約70%は海外で保有しており、米国に戻すには「税制が複雑で膨大なコストがかかる」と指摘。米企業の競争力強化には、税制の劇的な改革が必要だと訴えた。

 アップルに限らず、国によって違う税制を使って税負担を軽減しているグローバル企業は少なくない。目立つのは国境にとらわれずにビジネスを展開するIT企業。拠点を構えてモノを作る製造業とは異なり、どの国でどの地域向けのサービスを配信するかといった事業内容が捕捉しにくい。

 問題が注目されるようになったのは昨年、世界的なコーヒー店チェーン、スターバックスの節税が英国で批判されてからだ。1998年に英国に進出したスターバックスは低税率のスイスやオランダに利益を移転。累計30億ポンド(約4700億円)の売上高を計上しながらも、英国での法人税支払いは860万ポンドしかなかった。

G8でも議論

 緊縮財政策を迫られる欧州の世論は大がかりな税金対策に反発。フランスでは、ルクセンブルクなどに利益を移すアマゾンへの批判が強まった。アップルやグーグルなどIT5社がフランスで支払った税金は本来の20分の1だったという民間試算もある。

 各国政府も対応に動き始めた。英独仏は今月上旬の7カ国(G7財務相中央銀行総裁会議で節税問題を指摘。欧州連合(EU)は22日に開く首脳会議で、納税の抜け穴をなくす対策について討議する。

 今年の主要8カ国(G8)議長国、英国のオズボーン財務相は「グローバル経済に合った国際的な課税ルールを(首脳会議で)協議する」と語った。経済協力開発機構OECD)は今夏をめどに、グローバル企業への課税の行動計画を策定する。まず極端に低い法人税率を見直すよう要請。将来は各国での事業規模に応じて納税するルールを定める案がある。

 日本では、米IT企業ほど積極的に節税に動いている企業は少ないとみられる。ただ日本政府が単独で企業の保有資産や納税などの情報を把握するのは困難。情報共有化や国際的な課税ルールで欧米と連携する考えだ。