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M&Aの腕を磨いて世界展開の加速を

新卒採用から終身雇用が当たり前だった時代から、中途採用や転職に世の中の抵抗がなくなってきたのは、ここ15年くらいの話。自前でゼロからの海外進出の時代から、M&Aという選択肢が拡がってきたのも、外部の血が混じることに昔ほど抵抗がなくなってきたことが大きい。会社の売買ではあるが、結局は人と人との融合と考えれば、人事戦略がKeyとも言える。

 

日本経済新聞:2015年2月25日)

日本企業による海外企業の買収が加速している。日立製作所はイタリアの防衛・航空大手のフィンメカニカから同社の鉄道車両・信号事業を買収すると発表した。旭化成は2600億円を投じて米国の電池素材メーカーのポリポア社を傘下に収める。

 このほか、日本郵便によるオーストラリアの物流大手の買収や、キヤノンによるスウェーデンの監視カメラ世界最大手の買収など、買収額が数千億円規模の大型案件が目白押しだ。

 今年1月には伊藤忠商事が中国最大の複合企業、中国中信集団(CITIC)に6千億円を出資すると発表し、「日本企業の中国企業への出資案件として過去最大」と各方面から注目された。

 買収ラッシュが映すのは、グローバル化にかける日本企業の意欲の高まりだ。守りの経営から脱却し、それぞれの企業が独自の成長戦略を描き始めたといえる。

 日本の上場企業が持つ手元資金は過去最高水準の100兆円近くに達している。資金を漫然と抱え込むのではなく、新たな成長に向けて、M&A(合併・買収)を含めた戦略投資に踏み出し始めたことは評価できる。

 M&Aの活用は経営の幅を広げる効果もある。これまで日本企業の海外進出はゼロから工場を建てたり、販売網を独自に整備したりするタイプの事業展開が多かったが、事業基盤の固まった既存の会社を買うことで、よりスピード感のあるグローバル展開に道が開けるだろう。

 ただし、買収にはリスクがつきまとうことも忘れてはならない。丸紅は2013年に買収した米穀物大手ガビロンが想定通りの収益を上げられず、減損処理を迫られ、業績の下方修正につながった。ソフトバンクが買収した米スプリントも苦戦が続いている。 

 こうした見込み違いを避けるためにも、各企業梅田専太郎M&Aの腕を一段と磨く必要がある。

 買収を成功に導くには、相手企業の持つ資産価値を正確に評価したり、買収後の統合作業を円滑に進めたりするための財務や人事の専門家集団の育成が欠かせない。今のような買収ブーム時には、本来の価値より高い値段を払ってしまう「高値づかみ」が起こりやすく、それにも注意が必要だ。

 M&Aの巧拙が企業の盛衰を左右する。そんな時代が到来したことを経営者は肝に銘じてほしい。