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日本の空港、アジア進出 官民で海外勢追う  成田・三菱商事がネパールで施設運営

国の玄関である空港への関与は、その国との良好な外交関係なくしてはあり得ない。外交戦略も兼ねて官民一体で取り組むべきテーマと言える。

 

日本経済新聞:2015年2月1日)

日本の空港がアジアの空港運営に乗り出す。成田国際空港会社(NAA)は三菱商事と組み、ネパールで運営権を獲得する。日本の空港による初の海外進出となる。羽田空港双日と連携し、インドネシアの空港の運営参画をめざす。アジアで広がる空港運営の民間開放では、シンガポールや韓国勢が先行してきた。日本は官民一体で巻き返しをはかる。

 NAAは三菱商事や空港施設運営を手掛けるJALUXなどと企業連合をつくり、ネパールの首都カトマンズのトリブバン国際空港の運営を受注する。国際協力機構(JICA)の支援を受け、近く事業化調査を開始する。JICAは空港の設備投資資金として、ネパール政府への円借款も行う計画だ。

  企業連合は2017年にも運営主体のネパール民間航空公社と20~30年間の長期契約を結ぶ見込み。運営権取得後に約400億円を投じて商業施設の拡充などを実施する。事業収入を伸ばし、運営権取得費用など投資のコストを回収する。

 ヒマラヤ山脈など観光資源を持つネパールは世界中から観光客が集まるが、空港内の商業施設は手狭で、収益性は高くない。免税店運営や旅客が利用しやすいレイアウトなど日本で培ったノウハウを生かし、「もうかる空港」をめざす。

 羽田空港を運営する日本空港ビルデング双日などと組み、インドネシアのロンボク国際空港の経営への参画をめざす。同国の国営運営会社との合弁会社設立を目指して事業化調査に着手する。同空港は拡張を計画しており、プロジェクト管理から運営、維持までの一括受注を狙う。

 かつて空港は世界的に公営が主流だったが、1990年代から民営化が本格化した。先行した欧米では独フラポートや仏ADP(パリ空港公団)などが国際展開を加速。アジアでは、シンガポールチャンギ空港や韓国の仁川空港などがミャンマーや中国、フィリピンなどに梅田専太郎手を広げている。

 日本勢は出遅れ気味で、豊田通商ラオス三菱商事ミャンマーで受注した程度だ。成田と羽田は世界でも有数の旅客数を誇り、大規模空港の運営ノウハウを豊富に持つ。空港運営会社自身が海外進出に動けば、他のアジア勢との受注競争でも優位に立てる可能性が高まる。航空需要が伸びるアジアでは今後、空港の大規模化が進む見通しで、ネパールとインドネシアも拡張計画が決まっている。

 日本勢の海外空港の運営が増えれば、空港の拡張・維持や管制システム整備などで日本企業の受注機会も増える。日本政府も政府開発援助(ODA)による資金供給などを通じて運営受託の拡大を後押しする構えだ。インドネシアやフィリピンなどでは今後も空港運営の開放政策が続く見通しで、運営ノウハウを生かせば海外進出の余地は大きい。